東京地方裁判所 昭和45年(ワ)12384号 判決 1971年2月22日
原告 大橋清蔵
右訴訟代理人弁護士 小林哲郎
同 吉弘正美
同 平松敏則
被告 有限会社 大橋保善社
右被告を代表すべき者 大橋浩蔵
主文
1 昭和四五年三月二二日被告会社臨時社員総会においてなされた別紙目録一、二、三記載の各決議は、無効であることを確定する。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
事実
原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、その請求の原因として次のとおり述べた。
一、原告は、被告会社の出資口数一八〇口を有する社員で、かつ、同社の代表取締役である。
二、ところが、被告会社の商業登記簿によれば、昭和四五年三月二二日開催された被告会社の社員総会において、別紙目録一、二、三記載の各決議がなされた旨の登記がある。
三、しかしながら、右社員総会は、実際に開催されたことがない。
四、よって、原告は、被告に対し右各決議の無効確認を求める。
被告を代表すべき者は、「原告の請求を認諾する。」と述べ、答弁として「原告主張の請求原因事実は、すべて認める。」と述べた。
理由
一、職権をもって按ずるに、被告会社の社員総会決議の不存在を理由とする右決議の無効確認の訴は、株主総会決議不存在確認の訴と同じく、商業登記簿等に記載され、会社その他の関係人においてあたかも適法に拘束力を有するかのごとく取り扱われ勝ちの決議について、その拘束力のないことを判決をもって画一的に確定することを目的とする訴であるから、被告を代表すべき者がその請求を認諾をし、これを口頭弁論調書に記載しても、民事訴訟法第二〇三条にいわゆる確定判決と同一の効力を有するに由なきものと解するを相当とする。
されば、被告を代表すべき者が、原告の本訴請求を認諾しても、認諾の法律効果を生ずるものではないが、原告主張の請求原因事実をすべて自白しているので、右事実によれば、原告の本訴請求は、理由があるから正当として認容すべきである。
よって、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条の規定を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 吉野衛)
<以下省略>